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■気候と造園
今日の春夏秋冬という気候サイクルは、およそ1万1千年前に形成されたと言われています。そして、およそ4千年前に南方から伝わった稲作により、人々は何百万年も続いた狩猟採取のための移住生活から、土地を水田として利用し食を得る定住生活へと移り変わり、今日までに至ってきました。
温暖多雨な気候を持つ日本では、降った雨をすぐに海に流すのではなく、水田に一時溜め徐々に下流へ流すという、水利用システムが定着してきました。
そして陸域の動植物は、四季折々の気候と人間が作り出す水田をもとに、『敵から身を守る』、『食を得る』、『子孫を増やす』ことを満たすため、与えられた環境条件に適応なり克服なり進化を重ね、豊かな自然環境を創ってきました。
ところが近年、物質的に恵まれた現代社会では、全国的に豊かな水に恵まれた水田をつぶし、道路や建設物による都市開発が著しく行われ、降った雨は一挙に海へ流し切ろうという発想で河川管理が行われています。このため護岸の材料と構造が画一化され、地域独特の伝統護岸工法の継承が途絶えてきています。生物たちは、淵・瀬・淀み水深のすみ分けなど、地域護岸の形態に応じて進化してきました。
さらに開発以前からそこに生育していた、動植物の生育域が寸断され、工業排水や化学薬品による水質の悪化、水田では、畦を壊して基盤整備が進み、そこへ農薬の使用により害虫のみならず益虫も殺傷することになりました。さらに、海外からの移入・外来・浸入種により生物多様性が脅かされ、すでに絶滅した生物や絶滅寸前の生物が年々増えています。
人類は、進歩の著しい土木や建築の技術導入とエネルギー多消費型の生活に、より豊かさを求めた結果、長い時間をかけて形成された自然環境を破壊するにいたってきました。

